第1章 静止時の有利な体位維持の仕方
1. 有利な体位維持の仕方のための二つの条件
私達が自身の体位維持の仕方を有利なものにするためには,次の二つの条件を実現するように制御する必要があると考えている。一つは,一つ一つの体を支える骨を立てることであり,もう一つは,体の重心を支持基底面上の適切位置に位置づけることである。
後者の重心制御については運動学で指摘されていることで,新しいことではない。前者の「体を支える骨を立てる」ことは,私の独自の定義を含む,独自の見解である。
この二つの条件を満たすように制御することによって,実行者は体を支える骨の一つ一つを動きにくい状態にすることができる。また,脊柱起立筋をはじめとした抗重力筋を適切に用いることになり,局所的な筋や靭帯の負担を軽減するなど,筋負担を限定的なものにすることができると考えている。この理由の一つとしては,実行者がこれらの条件を満たすように制御することで,体の重量による荷重や骨の反力,床反力を体を支える骨の安定に活かせるようになるからである。
また,この二つの条件を満たした体位維持の状態は,理想的な姿勢アライメントの状態となる。そして,この体位維持の仕方は,故障や痛みなどの問題になりやすい体の負担を軽減し,呼吸や発声などの機能を制約しないものとなる。実行者にとって有利な体位維持の仕方となると考えている。
この二つの条件を満たすように制御することが,私達にとって有利な体位維持の仕方となるということが,私の一つの主張である。そして,一定の割合の人はこの二つの条件を満たすように制御しておらず,体位維持の仕方を不利なものに陥らせていることも私の主張である。こうした人は,体に余計な筋緊張を加えることになり,痛みやこりなどの問題を抱えやすく,機能を制約しており,動作で本来の能力を発揮しにくくなりやすい,と考えている。
本章では,二つの条件の特徴を説明し,また,静止時において実行者がこれらの条件を満たすように制御して体を支えた時における有利性について説明する。これらの条件を満たす体位維持の仕方は,部位や体節をより大きく動かす動作時においても,体を安定させやすいなど有利なものとなると考えている。動作時における有利性については次章で述べることにする。
(その2につづく)
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