有利な体の使い方:序論その3

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




フォーゲルバッハの見解の延長にあたる

動作時の姿勢制御について,既存の一つの見解がある。ドイツの理学療法士のクライン・フォーゲルバッハの見解である。いわてリハビリテーションセンター機能回復療法部理学療法科長の福士宏紀は,共著『運動連鎖〜リンクする体』でクライン・フォーゲルバッハの見解の解釈を説明している[8]。この中で福士は,ダイナミック・スタビリゼーション(動的安定性)という動作時の姿勢制御の方法として,カウンターウェイト,カウンターアクティビティ,カウンタームーブメントの3つの対応の仕方を示している。

福士は,「(身体部位を動かして身体質量バランスを調整する)カウンターウェイトの活性化は平衡機能の基盤となる重要な活動である」ことを述べ,「(運動に拮抗する筋緊張で制動する)カウンターアクティビティを多く用いた活動が巧緻的で高度な動作パターンで,カウンターウェイトの活性化を用いた活動が拙劣なパターンとの認識は全くの誤りである」と述べている。動作の際に体は動かされやすいが,筋緊張によってその動きを制することに頼るのではなく,身体重量バランスの調整を行うことが重要であると述べている。

私の仮説は,一定の割合の人が動作時の姿勢制御の対処として,腹筋群と首の筋群の筋緊張を過剰にする過剰共縮の対処に陥っている,というものである。フォーゲルバッハのダイナミック・スタビリゼーションの考えで私の主張を述べると,一定の割合の人がカウンターウェイトではなく,腹筋群や首の筋群の筋緊張を過剰なものにして制動するカウンターアクティビティを安易に採用している,ということとなる。つまり,私の仮説は,フォーゲルバッハのダイナミック・スタビリゼーションの見解の延長にあり,陥りやすいパターンの一つを具体的に示したものといえる。

また,クライン・フォーゲルバッハは,著書『機能的運動療法』で「身体上のある任意の点が運動刺激によってある方向に動かされた場合,その隣の関節は運動の影響を受け,実際に動くことがある」とし,それを「継続運動(コンティニューイング・ムーブメント)」とした[9]。フォーゲルバッハは,「運動障害や運動痛がある場合,隣り合う関節に望まない継続運動が起こりやすい。その際に隣り合う関節への継続運動のタイミングが早すぎたり,違う方向への運動が起こることがあり,その場合には運動のバリエーションが失われる。それが異常動作のメカニズムである」と述べ,「異常動作は自動的に行われるが,効率が悪く,目的に最短距離で近づくことができなくなる」と,継続運動が適切に抑制されないと異常動作となり,効率が悪くなることを述べている。

私は,フォーゲルバッハのいう継続運動が,私の独自の定義である骨傾斜容認(体軸の関節を必要なく屈曲,伸展させることを容認すること)という実行者の態度によっても起こるものと考えている。実行者に運動障害や運動痛がある場合に限らずに,実行者が骨傾斜容認という態度でいれば,体を支える骨を動かしてしまうという「望まない継続運動」を起こすことになる。このため,実行者の骨傾斜容認の態度が,動作を不利なものとするという考えである。そして,特に実行者が腹筋群と首の筋群の筋緊張を強くする際に,骨盤や胸郭,頭部を動かしてしまうという継続運動の傾向があり,これが実行者の動作効率を悪くさせるという考えである。私の仮説は,フォーゲルバッハの継続運動の見解の延長にあり,やはり陥りやすいパターンの一つを具体的に示したものといえる。

言葉の用法について

私達が体位を維持する活動は,「姿勢維持の活動」,または「姿勢制御」といってもよいものであるが,「体を倒れないように支える」ことを表現したいため,ここではあえて「体位を維持する活動」「体位維持活動」という表現にしている。

姿勢維持という言葉は,体を支えるという意味よりも,体は支えられている前提で,その支え方の形や状態を示す意味が一般的には強くなるように考えている。一定の割合の人の体位維持の仕方が有利なものになっていない理由の一つとして,私達が「体を支えている」「体を支える必要がある」ことの認識を欠落させやすいことがあると考えている。この再認識を人々に促したい。そのために,「体を支えている」ことの意味も含む「体位維持」という言葉をここでは用いている。

体位とは,「重力の方向に対する身体の相対的位置関係すなわち重力の場における身体の力学的関係」である[10]。その基本的様式として,臥位,座位,立位がある。それぞれの体位において,支え方の形や形態を示す言葉として,姿勢という言葉も用いる。つまり,立位の状態として,猫背の姿勢もあれば,反り過ぎの姿勢もあるなど,様々な姿勢がある。運動学ではこれに対して「構え」という言葉があてはめられるが,姿勢という言葉は構えの概念も含んでおり,より一般的な言葉で意味が通じやすいことから,姿勢という言葉を用いている。このように体位と姿勢という言葉を用いる。

言葉の用法は基本的に学術的な用い方に準ずるようにしたものの,わかりやすさを優先し,同じことを示す一般的な言葉があればそれを使うようにした。「背側」はそのままだが,「腹側」は「前側」としている。体の部位についても,頭,首,腕,脚など一般的な略称を多く用いている。

その4につづく)

脚注

[8] 嶋田智明,大峰三郎他 『運動連鎖〜リンクする体』 文光堂,2011年。
[9] クライン・フォーゲルバッハ(野澤絵奈訳) 『機能的運動療法』 丸善出版,2012年。
[10] 猪飼道夫の定義。中村隆一他『基礎運動学』(2003年)より。







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