1ー5 立骨重心制御状態で回避できる負担,機能の制約(1章その19)

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




体を支える骨が立骨状態で,体重心が適切位置に制御されている状態が,立骨重心制御状態である。立骨重心制御状態には,体を支える骨が動きにくくなり,体位維持における局所的な筋や靭帯といった組織の負担が軽減されるという利点があることを述べた。立骨重心制御状態には,それが理想的な姿勢アライメントとなることもあり,この他にも利点がある。ここでは,立骨重心制御状態の有利性を,骨傾斜容認状態と重心乖離容認状態の不利性と対比していく形で,具体的に挙げる。

脊柱の椎間板に問題となりやすい変形が生じにくい

椎間板は脊柱の椎骨を連結する線維組織であり,自重による荷重を受ける組織である。椎間板は骨とは異なり,弾性が大きいため変形する。脊柱で骨傾斜が起こっている際は,荷重の偏りにより椎間板には曲げの変形や剪断の変形が生じる。こうした変形は圧縮の変形とは異なり,変形に偏りがある。この変形の偏りが過度に継続する場合は,椎間板が故障に至りやすくなる。椎間板ヘルニアはその故障の代表例である。これは,曲げや剪断の変形の過度な継続により,椎間板の外側にある線維輪が損傷して髄核と呼ばれる線維輪内に収められていた組織が突出する故障である。

立骨重心制御の状態であれば,椎間板の面に等分布に近い最大面積荷重がかかるため,変形に偏りが生じにくく,椎間板は故障に至りにくい。

靭帯の負担が軽減される

体を支える骨が立骨状態であれば,靭帯が緊張することが最小限に留められ,靭帯負担が最小限に抑えられる。

骨が骨傾斜の状態であれば,その関節で靭帯は伸ばされる。そして,骨傾斜の角度が大きくなり,それが関節可動域の限界に近づく場合は,靭帯は緊張し,靭帯の負担となる。骨傾斜容認状態は,こうした骨傾斜がある状態であり,立骨重心制御状態に比べて靭帯負担が増えやすいといえる。

この靭帯の負担により問題になりやすい箇所が,仙腸関節と腰椎と考えている。骨傾斜容認では骨盤スライド後傾が起こりやすく,この場合は寛骨に骨を通じた荷重と反力によって偶力が生じることになる。この偶力は寛骨を腹腔の方に回転させる力となる。しかし,仙腸関節は靭帯で強く結びつけられていてほとんど動かない関節であり,この偶力の力は靭帯緊張で受け止められる形となる。偶力が生じた場合は,仙腸関節の靭帯負担が大きくなる。また,骨盤スライド後傾した状態では,同時に腰椎屈曲が起こりやすい。これらの骨傾斜によって骨のアライメントが変わり,寛骨と腰椎下部に付着する腸腰靭帯も状態維持のために強く緊張することになる。これも腸腰靭帯の負担となる。こうした靭帯のある腰椎下部と骨盤は,脊柱構造の基盤となる部位であり,上半身の体重分の負荷がこの部位にかかることも,この部位における靭帯負担が大きくなる特徴といえるだろう。

立骨重心制御状態では,寛骨や仙骨,そして腰椎が立骨状態となることから,仙腸関節や腰椎を含めて靭帯負担は少なくなる。このため,立骨重心制御状態は腰痛の一つの要因を回避しやすい体位状態となるといえる。

首の背側の筋群の負担が軽減される

骨傾斜容認状態で,骨盤スライド後傾や腰椎や胸椎の屈曲がある場合には,頭部前方突出が起こりやすいことは前述した。また,頭部前方突出の状態では,実行者が顔を正面に向けるために,頸椎を伸展させることになる。この状態では,首の背側の筋群が頭の前方に倒れる力のモーメントを支えながら,頸椎伸展を担うことになる。この場合は,首の背側の筋群は,両付着部が近づいていて短縮した状態で働くことになる。このため,筋収縮を進める必要があり,筋緊張は強いものとなる。首の背側の筋群の負担が大きくなる。筋が短縮した状態で働く場合に筋収縮を進めざるを得なくなることは,第2章で詳細を述べている。

立骨重心制御状態であれば,骨盤や腰椎,胸椎が立ち,頸椎も立骨状態が実現される。その上に頭蓋骨が最大面積荷重の立骨状態で乗る状態で,実行者の顔は正面を向くことになる。実行者が顔を正面に向けるために頸椎を伸展させる必要はない。この状態では,頭部前方突出も起こっていない。首の背側の筋群は,両付着部が近づいておらず,適切な長さで働くことになる。このため,筋収縮は必要以上には進まず,筋緊張は適度なレベルとなる。

首の背側の筋群の強い筋緊張が継続する場合は,肩こりや首のこり,これらの痛みを実行者にもたらしやすい。立骨重心制御状態はこうした不快な症状を回避しやすい体位状態となるといえる。

腹腔の臓器などの器官が過度に圧迫されない

骨傾斜容認状態で,骨盤スライド後傾と脊柱屈曲が起きている場合は,腹腔内圧が高くなるといえる。骨盤スライド後傾と,腰椎や胸椎の屈曲は同時に起こりやすいことは述べた。この場合は,腹腔の底となる骨盤が前方へ移動して後傾する一方で,胸郭が前傾することで腹腔の天井となる横隔膜が下がることから,腹腔容積が狭められることになる。また,この場合は,腰椎や胸椎の屈曲から,胸部以上の重量が骨に適切に乗る形にならずに,胸部以上の重量による荷重がより腹腔にかけられる状態となる。実行者は骨傾斜容認の態度でただ止まればよいと考えていれば,腹腔に荷重をかけて背筋群の働きを弱めることを選択するだろう。このため,腹腔はより強い力で上から圧迫を受けることになる。この結果,腹腔内の臓器や器官に生じる圧力が強くなる。特に中空構造である胃,小腸や大腸といった消化器官は圧縮されやすい。この圧力は,これらの臓器の活動を制約することにもなり得る。

立骨重心制御状態では,骨盤が後傾せずに立ち,脊柱が立ち,胸郭が適切に維持されることから,腹腔は最大の容積を保てる。また,胸部以上の重量の荷重は,背筋群に支えられながら最大限に骨を通じて伝えられる。このため,腹腔内圧は過度に高くならず,腹腔の臓器などの器官への圧迫は最小限のものとなる。

(第1章その20につづく)







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