4. 立骨重心制御と骨傾斜容認,重心乖離容認
立骨重心制御と骨傾斜容認,重心乖離容認
体を支える骨を立骨状態とする制御によって,実行者は骨を動きにくい状態にでき,局所的な筋や靭帯といった負担を軽減できることを述べた。そして,体の重心を適切位置に位置づける制御によって,実行者は足部を強固に抑止でき,それによって体を安定させやすくなる。また,体を支えるための筋負担を限定的なものにできることを述べた。このことから,この二つの条件を満たすように制御する体位維持の仕方は,体の止まりやすさや,体位安定維持における筋や靭帯といった組織の負担の限定化という有利性があるものと考えられる。
この有利性は,実際の私達の体でも維持されると考えている。この二つの条件を満たすように制御された場合,私達の体位維持の状態は一般的に理想的とされる姿勢アライメントの状態となり,上の骨からの荷重と下の骨からの反力によって中間に位置する体を支える骨に偶力が生じにくくなるからである。
また,この二つの条件を満たすように制御された体位維持の仕方の有利性は,体の止まりやすさだけではない。この体位維持の仕方には,問題に至りやすい体の負担が回避されやすくなること,呼吸や発声などの機能を制約しなくなること,などの更なる有利性があると考えている。
実行者が体を支える骨を立骨状態とすること,体重心を適切位置に位置づけること,の二つの条件を実現しようとする制御のことを,その態度も含めて「立骨重心制御」とここでは呼ぶことにする。立骨重心制御が様々な体位において実現されている状態を「立骨重心制御状態」とする。
立骨重心制御状態の有利性を述べるにあたって,この二つの条件を満たしていない状態や,または満たそうとしない実行者の態度と比較する。その一つである骨傾斜を容認する実行者の態度のことを「骨傾斜容認」とここでは呼び,もう一つの重心が適切位置から乖離することを容認する実行者の態度を「重心乖離容認」と呼ぶことにする。実際に骨が傾斜した状態や重心が乖離した状態を,それぞれ「骨傾斜容認状態」「重心乖離容認状態」と呼ぶ。実行者がこれらを容認する態度で体位を維持する際は,局所的な筋や靭帯といった組織の負担が大きくなる。その体位維持の仕方は,張力に依存した事後的な対応となる。このため,この体位維持の仕方のことを「張力事後対応」とここでは呼ぶ。
一定の割合の人は,体位を維持するにあたってこの二つの条件を実現しようとする立骨重心制御の態度を持たずに,立骨重心制御状態にしていないと私は考えている。つまり,一定の割合の人は,体を支える骨を骨傾斜の状態とし,体重心を適切位置から乖離させている状態であり,骨傾斜容認や重心乖離容認で張力事後対応をしているということである。これは私のレッスンでクライアント観察を通じて得た見解である。
骨傾斜や重心乖離を多少容認しても,私達が体位を維持することは可能である。しかし,私達がこれらを容認して体位を維持した場合は,局所的な筋や靭帯といった組織の負担が大きくなる。この負担は,実行者に痛みや故障などの問題を生じさせるものとなる。また,この体位維持の仕方は,実行者の動作や呼吸,発声を劣化させるものとなる。
以下で,実際の体において一定の静止時における立骨重心制御状態,骨傾斜容認状態,重心乖離容認状態の実態がどのようなものとなるかを述べ,その上で対比していく形で立骨重心制御とその状態の有利性について述べる。
(第1章その9につづく)
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