「リーディングエッジ」で、陥りやすいワナから抜け出す

リーディングエッジで陥りやすいワナから抜け出す
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リーディングエッジとは

体の使い方の基本 その4です。

体の使い方に変化を与える際の意識の仕方としては、「本来の目的を意図すること」を勧めました。「本来の目的を意図すること」は、「何を動かすのか」を考えて、それを動かそうとする意識となります。これは、初心者の時の意識ともいえる。

これが前回までの説明。

この意図については、テクニックとしての呼称があります。
「リーディングエッジ(leading edge)」といいます。

edge(先端)をlead(導く)するということですが、つまり動作の際に導く先端となる箇所を決めて、それを導こうと意図することを示しています。

導くべき先端となる箇所は、体の部位でもいいし、手に持った道具の一部でもいい。体の部位でも、指先のような突端部でもいいし、胴体表面などのように表面部でもいい

もっといえば、動作だけでなく、呼吸にも発声にも導くべき先端となるものを設定していけます

リーディングエッジの考えは、アレクサンダーテクニークの私の先生の一人であるキャシー・マデン先生(Cathy Madden)から学んだことです。今となっては、キャシー先生よりも私の方がこの考えの重要性を言及しているくらいかもしれません。

体の使い方に変化を与える際の意識の仕方において、私はリーディングエッジ(本来の目的を実現しようとする意図)を基本中の基本に位置付けていますから

歩く時のリーディングエッジは?

一つの例をみていきましょう。歩く時のリーディングエッジはどこでしょう?

答えは、体の前面です。下記の図の太線部ですね。
ここを、進む方向が前だから、「前に導く」ようにするのです。

当たり前のことでしょ。
でも、普通こうは考えませんよね。
歩く際に一般的に何を意識していくかというと、「足を動かす」となるでしょうか。

二つの意識をそれぞれやってみると、違いを感じられる方もいるでしょう。

単に「体の前面」というと頭部の前面(つまり顔)も含みますが、私たちは普段、頭部のことを考えようとしないので、私は「頭と体の前面を同時に前に導こうとしてください」と伝えています。また別途触れますが、頭の意識は重要なんです。

そして、追加で「足の筋や関節は勝手に働いてくれる」と考えてみてください
この時の方が足の筋緊張は緩みやすくなるでしょう。これだけで軽さを感じられる人もいます。

この追加した意識も、リーディングエッジとともに持っておきたいことなんです。

「筋は勝手に使われる」と考える

前の投稿で、私たちが「筋を使おう」とする動作意図を持っていやすく、これが過剰な緊張を誘発していることを説明しましたね。

歩くときには、足の筋を使います。だからこそ「足を使って歩こう」という意識は持ちやすく、頭や胴体という上半身よりも、足の下半身により注意が向かうことになります。

しかし、これでは「筋を使おう」とする動作意図になってしまい、歩く動作に用いられる足の筋を過剰に収縮させやすくなるんです。

それよりも「足の筋は勝手に使われる」くらいに考え、導くのは膝を前にくらいで「足はついてくる」のように意識していた方が筋収縮を抑えやすく、軽く歩ける感覚を得やすいんです。

動作というのは、全て筋収縮を伴って行われます。
私たちは確かに筋を使って動いているわけです。

そして体について学問として客観的なことを知れば知るほど、このことは基本的な事実であり、それだからこそ「筋を使おう」と思いたくなるでしょう。

これは客観的な事実ではあるが、主観的な意識にあてはまるわけではないんです。
関西大学で運動科学を専門とする小田伸午教授は次のように言っています。

科学者がよい動作はこうなっている、と分析した動きをそのまま実践しようと直接意識して行うのではなく、何か別な意識や感覚に置き換えることが重要なのです。(中略)科学者が明らかにする客観的動作と、動作をする当事者が感じている主観的動作の間にはずれがあります。このずれを、「主観と客観のずれ」と言います。(「一流選手の動きはなぜ美しいのか」小田伸午)

客観的なことが、そのまま主観的な意識にあてはまるとは言えず、むしろ別の意識に変える必要があると言っています。

そして、私の見解では、導くべき部位を導く意図を持った上で「筋は勝手に使われる」、または「関節は勝手に動く」と考えた方がいいのです。

これは経験的な知恵です。キャシー先生はこのようには説明していませんでしたが、これが経験的に有効だから指導で使っていました。私自身もこの方が軽く動作を行えますし、クライアントもこの方が余計な力を抜いてやりやすくなります。

経験的に有効なテクニックには何か理由があるはずですが、その理由を私が徹底的に考えて出した答えが、私たちは無自覚に「筋を使おう」とする動作意識に陥っていやすいので、リーディングエッジの意識が有効な代替案となる、ということなんですね。

陥りやすいワナがある

フィットネスが盛んになってきた現代では、筋肉がフィーチャーされやすくなっています。

  • 「腹筋を使って姿勢を正しましょう」
  • 「腸腰筋を使って歩くんです」
  • 「横隔膜で呼吸して」とか。
  • なかには「骨盤底筋使えてますか?」みたいなものもある。

あと関節も。

  • 「股関節を使って体を曲げて」
  • 「肩甲骨から腕を動かすようにして」とか。


で、解剖図などを見せられちゃったりすると、「なるほどそうなっている」と納得して、筋や関節を使おうとしてしまうでしょう。

これらを意識しても動きはできるし、動作も成り立つでしょう。ただ、筋収縮の過剰性は抜きにくくなるんです。結果的に、よりラクにできていた可能性は失われてしまっているんですが、これには気付きようがない。

これは、体の客観的な知識を知る現代人が陥りやすいワナなんです

私たちは、いちいち筋肉を使おうとしなくてもいいんです。
コップを持ち上げるときに「上腕二頭筋を使おう」とか思いますか?
コップを持ち上げようと思って動けば、上腕二頭筋は勝手に働いてくれますよね。

アフリカで原始的な生活をしている民族の人は、解剖のことなど知らないと思うけど、私たち文明化社会でいきる成人以上に軽くラクそうに動いている。幼稚園児だってそう。

彼らは、動かそうとしているものを動かしているだけ。筋肉だ関節だとか余計なことは考えない。で、この方がよかった。

じゃあ、私たち文明化社会の成人も彼らのように難しく考えずに動くようにすればいいのか、というと、それでは問題解決できないんですよね。

筋を過剰収縮させるパターンは、何も考えなければそのまま続けてしまうでしょう。だし、今更、原始的な生活をしていた際の知識・認識レベルに戻れないし、幼少のときの知識・認識レベルにも戻れるわけじゃない。悲しいかな、古き良き時代には戻れない、ということです。

現代の知識のワナにはまらないようにするには、この元々無自覚に出していた動作意図が一体なんなのかを知り、それを自覚して出していくようにするのです。

それが、
「その動作を導く先端を導きたい方向に導くようにすれば、筋や関節は勝手に働いてくれる」というリーディングエッジ、または本来の目的を実現する意図となるんです。

解剖学や運動学的な知識を知ることも大切なことです。でも、それを自分の動きに応用するには、ここで説明した一工夫が必要となることを覚えておいてください。ワナにはまらずに行きましょう。

少し長くなりましたが、本日の言いたいことまとめます。

まとめ
本来の目的を実現する意図は「リーディングエッジ(leading edge)」ともいう。

このリーディングエッジで導くべき部位を導く意図を持った上で、「筋は勝手に使われる」または「関節は勝手に動く」と考えるようにすると、過剰な筋収縮をやめやすくなる。

リーディングエッジで陥りやすいワナから抜け出す

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