有利な体の使い方:第1章その9

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声
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4. 立骨重心制御と骨傾斜容認,重心乖離容認(つづき)

目次

立骨重心制御の姿勢アライメント

実行者が,立位時に体を支える骨を立骨状態とし,体の重心を適切位置に位置づけるという立骨重心制御をすることによって,実行者の姿勢は一般的に理想的とされる姿勢アライメントになると考えている。つまり,立骨重心制御状態が理想的な姿勢アライメントとなるという考えである。これを完全な形で論証はできないが,推定する形でこれが成り立つ蓋然性が高いことを述べる。

ここではまず,一般的に理想的とされる姿勢アライメントの一例を用いて,それが立骨重心制御状態となっていることをみていくことにする。つまり,一般的に理想的とされる姿勢アライメントが立骨重心制御状態の必要条件を満たすことを確認していく。

理想的とされる姿勢アライメントについては,姿勢研究を行った理学療法士のケンダルらによる著書『筋:機能とテスト ―姿勢と痛み―』で表されている姿勢アライメントをみていくことにする[13]。図1−3は立位姿勢(側方視)の4つの姿勢タイプを示したものであり,『筋:機能とテスト』より引用している。ケンダルは著書において,Aを標準姿勢と呼び,理想的な骨格アライメントとした。そして,B,C,Dを不良姿勢とした。

図1−3 姿勢の4つのタイプ

図1−3 姿勢の4つのタイプ

図には点線が描かれているが,これはアライメントの基準となる固定基準線である。この固定基準線は,絶対的垂直を示す鉛直線で,足の外果(くるぶし)の少し前方を通るように記載されている。ケンダルは,外果の少し前方が正中前額面の起点となり,側方視における正中前額面が重心線とほぼ同じになるとしている。このことから,理想的な姿勢では体の重心は足関節よりも前に位置づけられているとケンダルもみていることがわかる。

ケンダルは,理想的アライメントでは,この固定基準線上に膝関節軸の少し前方,股関節軸の少し後方,腰椎の椎体,肩関節,頸椎の椎体,外耳道,冠状縫合頂点の少し後方が位置づけられると述べている。Aはその状態を示している。Aでは,固定基準線で前後の重量配分が均等となるような体位となっていることがわかる。他のB,C,Dと比較するとわかりやすい。この姿勢アライメントは,運動学では理想的な姿勢アライメントとして一般的なものである。
ケンダルが理想的な姿勢アライメントとしたAにおける体を支える骨とその関節の状態を推定していく。

骨と関節の状態の推定

足部の骨では,踵骨の上に距骨があり,中足骨の上に小さい骨の群があり,その上に距骨がある。距骨は前後の二方向より支えられる形となっている。これらの骨は,一定の広さのある関節面全体で互いに接している。密着する形となり,関節の可動域は狭い。これらの骨の関係は,関節面で最大面積荷重をかけている関係となっていることが推定できる。B,C,Dについても,骨の関係は最大面積荷重の関係となっているといえるだろう。

距骨の上に脛骨があり,それらは足関節で関節する。Aをみると,脛骨はほぼ垂直に立つ形となっており,脛骨遠位端が距骨の関節面に対して偏りなく最大面積荷重をかけている様子が推定できる。足関節は蝶番関節であり,距骨が突隆し,脛骨が陥凹する形で前後で円形をなしている。脛骨の距骨関節面で接する面積よりも,距骨の脛骨関節面の面積の方が大きい。このことから足部の骨の関節と異なり,足関節は可動域が大きくなり,距骨と脛骨の関係は複数の状態において最大面積荷重の関係になり得ることを示している。B,C,Dについても距骨と脛骨は最大面積荷重の関係となっているといえるだろう。しかし,体の重心が足部から外れるような可動域限界に近づいたような状態では,距骨と脛骨は荷重に偏りのある関係となっているだろう。

第1章その10につづく)

脚注

[13] ケンダル,マクレアリー,プロバンス(栢森良二監訳) 『筋:機能とテスト ―姿勢と痛み―』(原著第4版,邦訳第1版) 西村書店,2006年。

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