4. 立骨重心制御と骨傾斜容認,重心乖離容認(つづき)
骨と関節の状態の推定(つづき)
脛骨の上に大腿骨があり,それらは膝関節で関節する。Aでは,膝関節は伸展位となっている。大腿骨遠位端の関節面が脛骨の方向である真下を向き,脛骨の関節面に最大面積で荷重をかけている様子が推定できる。Aでは,骨盤から荷重を受ける大腿骨頭と,脛骨に荷重を伝える大腿骨遠位端とが垂直に近い関係をなしており,大腿骨は垂直に近い形で立っている。膝関節では,大腿骨遠位端の内側顆と外側顆がそれぞれ脛骨近位端の内側顆と外側顆に接し,大腿骨遠位端の前側が膝蓋骨と接している。大腿骨の内側顆と外側顆は,前後と側方で突隆して楕円状をなしている。それと関節する脛骨の関節面は平面に近いものである。両者は適合する形ではないが,それを関節半月が補っている。こうした構造のため,この膝関節では,骨が荷重をかけて接する面積よりも,それぞれの関節面の面積の方が大きい。このことから,膝関節の稼働域は大きく,大腿骨と脛骨の関係は複数の状態で最大面積荷重となり得る。膝関節が大きく屈曲する場合は,大腿骨遠位端の突隆の仕方が大きい形状により,荷重される面積は小さいものになるだろう。こうしたことから,B,C,Dについても,膝関節屈曲位ではないため,大腿骨と脛骨は最大面積荷重の関係となっていると推定できる。
大腿骨の上に骨盤の寛骨があり,それらは股関節で関節する。Aをみると,寛骨臼における関節面で,寛骨が大腿骨頭に対して最大面積荷重をかけていることが推定できる。股関節は足関節と類似する特徴を持つ。股関節は球関節であり,寛骨臼が陥凹し,大腿骨頭が突隆する形でそれぞれ半球上をなしている。このため,股関節では骨が荷重をかけて接する面積よりも,それぞれの骨の関節面の面積の方が大きい。このことから,股関節は足関節と同様に可動域が大きくなり,大腿骨と寛骨の関係は複数の状態で最大面積荷重の関係になり得る。Bについても,双方の関係は最大面積荷重の関係となっていると推定できる。しかし,可動域限界に近づくC,Dのような状態では,荷重に偏りが生じていて,双方の関係は最大面積荷重の関係ではないことが推定できる。
寛骨は仙骨と,仙腸関節で関節する。仙腸関節は可動域が極めて小さく,あまり動く関節ではない。寛骨と仙骨の関係は,互いの関節面全体で接する最大面積荷重の関係となっていることが推定できる。Aだけでなく,B,C,Dについても最大面積荷重の関係となっていると推定できる。
最も大きな違いが表れるのが,仙骨の上に位置づけられる腰椎・胸椎・頸椎である。最下部は腰椎で仙骨と関節し,最上部は頸椎で頭蓋骨と環椎後頭関節で関節する。各椎骨は椎体で連結し,上関節突起と下関節突起にある椎間関節で関節する。椎体連結部には椎間板がある。主には椎体が椎間板を通じて重量の荷重を伝えている。椎間関節も一定の荷重を受けて,各椎骨の安定に貢献している。
各椎骨間の最大面積荷重の関係は,複数の状態としては存在せず,均衡する一つの関係となるだろう。関節する双方の骨の関節面がほぼ同じ面積を持ち,その双方の関節面全体で荷重を伝える関係だからである。この場合は,椎体連結部にある椎間板には圧縮の力が生じ,圧縮の変形が起こっている。剪断や曲げの変形ではない。腰椎と仙骨も椎間板を持つ椎骨間と同様の形で連結しており,この関係についても同じことが言える。椎体部は微小のくさび様の形態をしている。このため,各椎骨と仙骨が最大面積荷重を伝える関係であれば,仙骨を含めた脊柱構造は,自然な弯曲を形成しながら,一方向に長く伸びることになる。Aには適度な弯曲があり,脊柱が上方向に伸びている様子がわかる。Aでは,椎骨間の関係は,最大面積荷重の関係となっていることが推定できる。
これに対し,B,C,Dでは,Aと比べて弯曲が大きかったり,弯曲が形成されていなかったりする。荷重の偏りがあり,椎間板には曲げの変形が起こっているだろう。こうしたことから,B,C,Dでは,椎骨間の関係は最大面積荷重の関係にはなっていないことが推定できる。
(第1章その11につづく)
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