有利な体の使い方:第1章その15

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




4. 立骨重心制御と骨傾斜容認,重心乖離容認(つづき)

重心乖離容認状態の傾向(つづき)

同じ立位でも直立の立位ではなく,股関節や膝関節を屈曲させた中腰の姿勢の場合においても,実行者が重心乖離容認であれば,重心を後方へ乖離させやすい(図1−6(2))。後方へ重心が乖離していることは,実行者の腹筋群や大腿四頭筋などの筋緊張が強くなっていることからわかる。また,実行者が立位で腕を体の前に位置づける場合や,腕を体の前に位置づけて手で何かを持つ場合でも,重心を後方へ乖離させやすい。

図1ー6 中腰姿勢における重心乖離容認

図1ー6 中腰姿勢における重心乖離容認

これらの場合に共通することは,体の前後の重量配分が直立の立位時から変わることである。重心乖離容認の人はこうした場合に,体の重量配分を調整して重心を適切に位置づけようとせず,重心の後方への乖離を容認して,生じた力のモーメントを筋緊張で支える体位維持の仕方となる。

座位においても,背もたれを用いない上半身直立の座位では,重心乖離容認の人は,起こしている上半身の重心を支持基底面上の適切な位置から後方に乖離させることになる(図1−7(2))。座位における支持基底面は,床面上の足底から座面上の坐骨の接面部までである。このため,実行者の上半身の重心が,坐骨の接面部よりも前にあれば支持基底面内に収まることになる。しかし,実行者が重心乖離容認でいる場合には,上半身の重心を坐骨の接面部よりも後方に位置づけることとなる。この場合は,上半身の重心位置は支持基底面から外れることになる。

図1−7 座位時の重心乖離容認

図1−7 座位時の重心乖離容認

このように重心を後方に乖離させてしまうのは,実行者が骨盤を立骨状態にしていないからである。私達が椅子に座る場合は,骨盤が後傾しやすい。座った状態は股関節屈曲位だが,この状態では股関節伸展のための筋である大腿二頭筋が伸長され,その大腿二頭筋が付着部の骨盤下部を前方に牽引するからである。このため,実行者が骨盤を後傾させたままで,その骨盤上に上半身を乗せようとした結果,上半身の重心を坐骨接面部よりも後ろに位置づけてしまうのではないかと考えている。実行者はこの状態を,大腿四頭筋や腸腰筋,腹筋群などの筋緊張を強くして維持することになる。これらの筋緊張の強化は,上半身の重心が坐骨接面部よりも前にあれば,それほど必要のなかったものである。

このように,実行者が重心乖離容認であれば,様々な体位において,起こしている体の重心を適切位置よりも後方に乖離させてしまうことになる。このため,実行者の体には後方に倒れる力のモーメントが生じることになり,実行者は前側の筋群の大腿四頭筋や腹筋群の筋緊張を強くさせることになる。

第1章その16につづく)







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