有利な体の使い方:第1章その7

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




3. 体の重心を適切位置に位置づける制御(つづき)

これは,私達の体の構造が不安定な構造で,常に動いてしまう,または動いているという特徴ゆえにいえることである。私達が完全に止まれるのであれば,モデルの(2)の方が筋への負担を軽減できるので有利なものとなるだろう。しかし,動いてしまうことから,(1)のように足部の止まりやすさを優先することのメリットが生まれるのである。

私達の体は立位では,二つの下肢の上に骨盤が乗り,その上に一つの脊柱が乗り,頭蓋骨がその上に乗るという構造である。三脚のように安定して止まる構造ではない。また,荷重がかかる体軸には多くの関節があり,そのうち足関節や股関節は回転しやすい構造である。私達の体はこうした不安定な構造であり,体には常に倒れる力が生じることとなる。私達は,それを筋や靭帯といった張力を用いて支え,立位を維持している。

そして,私達は,静止時といえども内的な動きを伴う呼吸活動を常時行っている。このため,常に体には動かされる力が働いている。動作時は更に動かされる力が体に働くことになる。

このような構造と特徴ゆえに,私達の体には静止時においては次のような動きがある。ある方向に体は少し倒れるが,その力のモーメントを支えて,元に戻そうと筋が働く。この結果,体は元に戻されるが,その勢いで反対側に倒れることになる。それをまた元に戻そうと筋が働く。こうした形で,私達は均衡位置を中心に微動しながら体位維持を行っている。これは重心動揺として観測されるものである。
このように,完全には止まれない体を一定の状態で安定させるためには,体のどこかを最も強固に抑止し,そこを基に筋でその他の体を止める活動を行い続けることが有利な戦略となる。そして,立位の場合における強固に抑止されるべき箇所は,足部となる。

物は,止まっているものと接する部位が多いほど,また接する面積が大きいほど,回転しづらくなるといえる。その物が,ある方向に回転しようとしても,止まっているものからの反力を受けやすくなるからである。実行者が支持部位である足部の足底で,最大面積荷重を床面にかけることで,絶対的に停止している床面から最大の面積で反力を受けられるようになり,足部を最も回転しづらくさせることができる。つまり,足部を最も動きにくくさせることができる。この際に,実行者は足底全体にべったりと荷重がかかっていると感じるだろう。

なお,立位の際に実行者が重心を足関節の少し前に位置づけようとすることにより,実行者は重心が大きく適切位置から乖離するような状態を避けることができる。この処置は,力のモーメントをある程度抑制し,筋の張力負担を限定的なものにする処置といえる。

さらに,実行者が重心を適切位置に位置づけようとする処置は,重心位置をそもそも支持基底面内に留める処置ともなる。適切位置は支持基底面内にあるものだからである。支持基底面は,立位では両足の足底とその間のエリアである。椅子での座位では,両足の足底と殿部の座面との接面部までで形成されるエリアである。

立位の時に,起こしている体の重心位置が支持基底面から乖離した場合は,足部も回転しやすく,体は倒れやすくなる。また,仮にこの状態で体が支えられたとしても,かなりの筋緊張が必要となる。私達は立位時に,重心位置が支持基底面から乖離している状態を一定時間継続させるようなことはしないだろう。しかし,座位時には,起こしている体の重心位置が支持基底面から乖離することはよくあることである。筋がその力のモーメントを支えられるからである。その筋の筋緊張の程度は,立位時で重心位置の支持基底面からの乖離があるときほどの筋緊張ではない。しかし,この場合,靭帯も含めて引張する組織の負担が大きくなることには変わりない。こうしたことから,重心を適切位置に位置づける制御は,重心位置の支持基底面からの乖離を抑制することにも貢献し,引張組織の負担を限定的なものにする処置であるといえる。

こうしたことが,私達が「体の重心を支持基底面上の適切位置に位置づける」制御をすることの有利性である。

第1章その8につづく)







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