第2章 動作時の有利な体位維持の仕方(その9)

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




3. 実際の体の動作における体位維持の仕方による違い(つづき)

重鎮基底制動

立骨重心制御の状態が動作時に維持されるためには,支持部位の抑止が前提となることが先のモデルから考察された。支持部位の抑止が適切に行われることで,有利な動作が導かれることは,上肢動作や発声の例でも考察した。この支持部位の抑止に貢献する制御が,実行者が支持部位接面部で支持面に最大面積荷重をかける制御であり,重心の適切制御である。

立骨重心制御は実行者が重心を適切に位置づける制御でもあるから,実行者は立骨重心制御だけを考えても支持部位の抑止を実現し得る。しかし,動作時には,筋収縮の牽引や関節を通じた作用力によって,体はより動かされやすく,重心もより動かされやすい。また,実行者は,床面への荷重から摩擦の力を得て,この摩擦力も活かしながら動作中に支持部位を抑止していくことになる。

このことから,実行者は動作時に,静止時以上に支持部位の抑止に積極的な注意を向け,支持部位の抑止とともに動作をしていく方がよい。実行者は動作時には,体の制動のための特別な態度を持つべきである。

この制動の仕方は,実行者が支持部位の接面部全体で荷重する状態になるように自身の重量バランスをとり,支持部位の抑止を基に自身の体を制動していく,というものである。このため,この制動の仕方を,それを実現する態度も含めて「重鎮基底制動」とここでは呼ぶ。この呼称は,「基底となる支持部位接面部へ十分に自身の重さを鎮めて,その支持部位の抑止を基にした制動」を表している。実行者は,重鎮基底制動を動作時に積極的に意図することにより,自身の重量による荷重を支持部位の抑止に積極的に活かすことができる。

また,実行者が動作時に立骨重心制御と共に重鎮基底制動を行うことで,「支持部位の抑止」だけでなく,自身の重量による荷重を「体を支える骨の安定」に積極的に活かせるようになる。つまり,体を支える骨に重量の荷重の十分な圧力を加え,体を支える骨が「つっぱり棒」のように安定する状態を導きやすくなる。重鎮基底制動は,自身の重量による荷重という筋力以外の力を自身の体位維持に積極的に活用するものであるから,実行者が動作時に筋緊張の依存度を高めずに体を止めることに貢献するものとなる。

重鎮基底制動は動作時において有利な制動の仕方となると考えている。効率的な動作や有効な動作を目指す人は,重鎮基底制動を積極的に意図すべきである。また,実行者が重鎮基底制動を採用することは,陥りやすい不利な制動のパターンを避けることにも貢献する。陥りやすい制動のパターンについては,先にも述べたように次章で述べる。



上肢における立骨制御

上肢の動作の際に,鎖骨が後方に回転するように動いてしまえば,動作のための筋群や上肢の骨を止める筋群が余計に筋収縮を進めることになると述べた。これは,実行者が鎖骨の動きを容認しているから起こることである。この実行者の態度は,上肢動作時における骨傾斜容認といえるものである。上肢動作の際には,鎖骨も場合によっては動くものであり,鎖骨が絶対的に動いてはいけないわけではない。肩甲骨と鎖骨,そして胸骨の相対的関係の崩れが,こうした影響をもたらすことになる。

有利な動作のためには,上肢動作の考察でも述べたように,胸骨から鎖骨,肩甲骨,上腕骨に反力が返されるように,その相対的関係が維持されることが実行者に求められる。特に鎖骨が動きやすく,その関係を崩しやすいことから,鎖骨が反力を返しやすい関係を維持することが実行者に求められる。この関係は,肩甲骨と鎖骨,そして胸骨における最大面積荷重の関係である立骨状態といえる。上肢における立骨制御状態の骨の関係である。この制御が行われれば,上肢の骨の相対的関係が維持されるようになり,止められた胸骨から上肢の骨が十分な反力を受けるようになる。そして,実行者は目的動作や制動を最小限の筋緊張で実現できることになる。胸骨,鎖骨,肩甲骨における上肢の立骨制御の関係は図2−4に示している。

図2−4 腕の立骨状態と骨傾斜状態(上方視)

(再掲)図2−4 腕の立骨状態と骨傾斜状態(上方視)

上肢の動作の際には,実行者は体軸における体位維持活動の立骨重心制御に加え,上肢の立骨制御を行うべきである。特に,実行者が大きな力を発揮する際や速い速度で行う上肢動作の際は,骨の相対的関係が崩れやすい。こうした際には特に役立つ制御となる。

(第2章 終わり。第3章その1につづく)
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