第7章 有利な動作の実現方法(その1)

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




ここでは,有利意図の人が動作時の重鎮基底制動と目的端先導を実現させる具体的な指示の仕方を示し,いくつかの基本的な体の動きについてそれらの応用の仕方を説明する。多様にある全ての行為について採り上げることができないため,読者が自身の生活やパフォーマンス活動でこの方法を採用する時は,ここで挙げる基本的な動きの方法を参考にして応用してほしい。

1. 立骨重心制御を継続する

有利意図の人は,動作時もできるだけ立骨重心制御の体位維持を実現する。これは様々な動きに共通していえることである。動作時に実行者は体を制動することが求められるが,立骨重心制御によって有効な制動方法となる重鎮基底制動を実現できる体位状態を形成することができる。

私達は何かをしようと思って動くわけであり,私達の注意はその行為の目的や達成に向かいやすい。このため,体位維持という活動に対する私達の注意は希薄であったり,欠落しているだろう。しかし,体位維持活動は私達が動く際に常時行っている活動であり,それが動きの成否や有利性を左右する。皿を洗う行為も,パソコンでタイピングする行為でも,走る行為でも,有利意図の人は「体位維持という活動を行った上で,その行為を行っている」と考えるとよい。

静止時において実行者が立骨重心制御を実現する際には,実行者は腹筋群と首の筋群の筋緊張を過剰にしていないかを確認していくようにすることを前章で述べた。有利意図の人は,動作の際に腹筋群と首の筋群をできるだけ筋緊張させないようにし,静止時と同様に,これらの筋群の筋緊張を過剰にしていないか確認していくようにする。

私達が動作する際には体を制動させる必要があり,私達は腹筋群と首の筋群を一定程度筋緊張させることになる。これらの筋群の筋緊張を静止時以上に強めることになる。このため,有利意図の人は,これらの筋群を過剰に筋緊張させないようにするという適度なさじ加減を身につける必要がある。有利意図の人は,これらを過剰に筋緊張させないようにするために「自発的には腹筋群や首の筋群に筋緊張を入れようとせず,必要程度の筋緊張がこれらの筋群に勝手に生じる」と考えておくとよい。

有利意図の人が動作時に,腹筋群と首の筋群を過剰に筋緊張させていない状態を確認するために,呼吸をして腹部前面が動くか,頭が胴体から独立していつでも動ける状態かを確認していくことも静止時と同じである。実行者が呼吸を確認することは,バルサルバ操作を採用していないかどうかの確認にもなる。首の筋群の過剰な筋緊張が継続していないかを確認するために,時々顔を左右に向けるように頭を動かすこともよい。

一方で,動作時にはある程度の腹筋群と首の筋群の筋緊張が実行者に生じることになる。大きな力の発揮を伴う動作や速い速度の動作であれば,実行者はこれらの筋群をそれなりに強く筋緊張させることになる。腹筋群と首の筋群の筋緊張は実行者の頭や肋骨を牽引することになるため,実行者はこの牽引に拮抗して立骨重心制御を維持するように積極的に体を制御することが求められる。特に,頭はその構造的な特徴から動かされやすい。有利意図の人は,頭を最高位置に位置づけ,顔が正面を向くように額を適度に前方に向ける制御をする。これによって過剰共縮制動の腹筋群と首の筋群の筋緊張による頭部前方突出と頸椎伸展の牽引に拮抗しやすくなる。

また,第5章の留意点でも触れたことだが,有利意図の人は,動作の速度を過度に上げないこと,バルサルバ操作をできるだけ採用しないことも考慮する。



2. 重鎮基底制動と目的端先導の具体的な指示

重鎮基底制動は効率的な制動の仕方であり,効率的な動作を導く制御である。これは,実行者が自身の重さを最大面積荷重で支持面にかけて,支持部位の抑止を考えながら動作を行うようにする制御である。

重鎮基底制動の実現を目指す人は,「体重を支持部位に預ける」「自身の体重を支持部位に落とす」ことを意図する。実行者はこのように意図することで,重量の力と骨の反力を活かして,支持部位と体を支える骨を安定化させることができるようになる。体の重量を「重し」として,支持部位と体を支える骨を安定させるのである。これは,文鎮が紙を動かさないようにする仕組みと同じである。実行者が「体重を支持部位に預ける」「体重を支持部位に落とす」という意図に従って自身の重さを鎮めるようにすれば,実行者は過剰な筋緊張を抑制することができる。実行者が既に体に過剰に筋緊張を生じさせていたのであれば,この意図によって筋緊張の過剰分を緩和できる。

また,実行者は「支持部位が止まっている」ことを意図することで,支持部位の摩擦力という筋力以外の要素を積極的に活かせるようになり,制動のための筋緊張の依存度を低減できるようになる。

目的端先導の意図も,動作の際には重鎮基底制動と共に有利意図の人が持つべき基本的な意図となる。目的端先導の意図とは,実行者が目的の動作や状態に導く先導端となる部位を特定し,その部位を動かす意図で動作を行い,筋収縮や関節変位は自動的に行われると考えることである。つまり,「動作を導く先導端を動かす」と意図することである。目的端先導における先導端となる部位は行為によって異なってよい。

重鎮基底制動と目的端先導の意図は,実行者が有利な動作を導く上での基本となる。有利意図の人は,体のどのような動きについてもこれらを行った上で,更に追加で考慮すべきことを加えていく方がよいと考えている。「追加で加えるべき意図」は後述する。また,実行者はその行為や活動をよりよくする様々な技術的な指示や,よりよい心理的な状態に導く意図や思考も加えてよいが,この重鎮基底制動と目的端先導の意図,そして立骨重心制御については,その優先順位を下げずにいるべきである。

指示の仕方:動作時の重鎮基底制動と目的端先導の意図
  • 動作前から動作中も立骨重心制御を実現する。頭を最高位置に位置づけて額を適度に前方に向け,骨盤を立てることで,体を支える骨を立てる。体重心を支持基底面上の適切位置に位置づけるために,支持部位の接面部全体に体重がかかるようにする。これを動作中も継続させる。
  • 支持部位に体重を預け,支持部位が止まっていることを考えて,目的動作を導く先導端部位を動かすと意図して動く。先導端部位を導いた結果,「筋は勝手に働いてくれる」,「関節は勝手に動く」と考える。
  • 先導端部位を導く意図で動き,動作に関わる筋や関節は自動的に用いられると考える。
  • 呼吸をして腹部前面が動く程度であるかを確認する。頭が胴体から独立していつでも動ける状態かを確認する。

第7章その2につづく)
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