第8章 有利な呼吸,発声の実現方法(その5)

有利な体の使い方 姿勢・動作・呼吸・発声




5. 有利な発声の実現方法(つづき)

喉を閉めない

よりよい発声を目指す人は,仮声帯を閉じるバルサルバ操作の反応を抑制するべきである。実行者は,バルサルバ操作の採用を習慣にしていると,発声時に腹筋群を筋収縮させた際に仮声帯を閉じる反応を加えてしまいやすい。

バルサルバ操作を習慣としている人によく起こりやすいことが,「次に話すことを考えている間に声帯を閉じる」ことである。私達は常に考えながら話しているだろう。適切な表現や言葉がタイミングよく頭に浮かばなかったときや,複雑なことを考えなければならないときに,話すことを止めている。この際に喉に蓋をするような形で声帯を閉じてしまいやすい。これは気道を閉じる反応であり,これによって実行者は発声できなくなるものの,実行者は話すのを止める際にここまでする必要はない。実行者は,気道を開けていても,息の圧力を生じさせなければ発声は行えない。これは実行者が必要ないにもかかわらず話す時にバルサルバ操作を行ってしまっている反応であり,過剰な反応といえる。

これは実行者が考えることに注意を集中して,同時に行っている「体を支える」という活動を即席保全の自動プログラムに委ねたからであろう。実行者は過剰共縮制動によって腹筋群や首の筋群を必要以上に収縮させてしまい,それに反応する形で仮声帯を閉じてしまう。



このように仮声帯を閉じるまでには至らないが,発声時に声門を狭める反応をする人もいる。実行者は発声のために腹筋群収縮をさせるが,それに仮声帯を閉じる反応を無自覚に加えてしまうために,声門を狭めて発声することになる。この反応は実行者の声の質に影響を及ぼす。この発声の仕方は仮声帯発声と呼ばれるもので,声門通過時の気流音が声に加わり,雑音成分の多い声となる。これは「喉詰め発声」「過緊張発声」とも呼ばれるもので,声帯への負担も大きくなる。歌唱や演技など声の質が問われる活動をする人は,避けるべき反応の一つとなるだろう。

また,言いづらいことを発言しなければならない時や,恥ずかしさから発言しづらい時などにも,声帯を閉じて声門を狭める反応を起こしてしまう人もいる。これは,心理面における「言いづらさ」を,体の声帯で「声の出しづらさ」として実行者が無自覚に体で表現してしまっているように思える。この時にも実行者は腹筋群収縮を強めている。これは自由な表現方法の一つとして意図的に用いられているケースもあり,やってはいけないことではない。これは負担を課すものであり,実行者が無自覚でこの反応を加えていることが望ましくないことである。

有利意図の人はバルサルバ操作の反応で声帯を閉じないように,発声の際に気道を開けておくようにする。その際に,「喉に蓋をしない」ように考えるとよい。閉じる反応をしたとしても,それに気づいてすぐに喉の蓋を解放していくようにする。

指示の仕方:発声
  • 立骨重心制御であり,支持部位である足底に体重を預け,呼吸の際に腹部前面が動く程度に腹筋が弛緩しているか確認する。
  • 「足底に体重を預けながら,発声する」という意図で発声する。
  • 大きな声量で発声したり,速く話すような場合は,「頭を最高位置に位置づけて額を適度に前方に向け,殿部を適度に後ろにする」ことを行いながら,「声の力が足底から体の前側を伝わって上がってくる」,または,頭を支え続けながら「声(声の力)に,足底から頭まであがってこさせる」と意図するとよい。
  • 首の筋群を過剰に筋緊張させないように,頭が胴体から独立していつでも動ける状態で発声する。発声活動中に時間的な余裕がある時には,吸息の際に腹部前面が膨らむ動きが起こる程度に腹筋群が弛緩しているか確認する。
留意点
  • 発声時や話している間に「喉を閉じる」反応がある場合は,実行者はバルサルバ操作を採用している可能性がある。立骨重心制御や重鎮基底制動を意図し,バルサルバ操作の反応を抑制するために,「喉の蓋を開ける」ようにして気道を開けておくようにする。
  • 話し出す時や歌い出す時の初動時に,筋緊張を強くしてしまって骨傾斜の動きを起こしやすい。話し出し,歌い出しの少し前から適切に体を制御していくようにし,それを初動時にも維持する。

第8章その6につづく)
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